診察室の 15 分と、患者さんが痛みと過ごす 23 時間 45 分
印刷したパンフレットでは届かない時間帯のことを、医療システムはまだ扱えていません。
リハビリ科とペインクリニックの外来で、運動器の慢性疼痛を診る機会が積み重なっていくうちに、一つ気づいたことがあります。
診察室で丁寧に話を聞き、薬や注射、運動の指導を行っても、思ったほど結果につながらないことがある。逆に、診察室での介入はそこまでだったのに、生活のなかで何かを続けていた方が、いつの間にか楽になっていることもある。
その差はどこから生まれているのか。長く考えるうちに、答えは診察室の中ではなく、診察室の外の時間にあるのではないかと思うようになりました。
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外来で患者さんと向き合う時間は、平均して 15 分ほどです。
そのあいだに、検査結果を確認し、診察し、説明し、薬やリハビリの処方を決め、次の予約を入れます。
一方で、患者さんが痛みと向き合っている時間は、24 時間です。
朝起きて、通勤して、デスクで作業して、家事をして、寝る。その全部の時間で、痛みは消えたり強まったり、ふっと忘れたり、急に意識に戻ってきたりしています。
診察室で診療できるのは、1 日のうちのわずか 15 分。残りの **23 時間 45 分は、患者さん自身に委ねられている** ことになります。
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診察の中で伝える「あとは家でストレッチや体操を」「無理しない範囲で運動を」といった言葉は、間違ってはいないと思います。ただ、「家でどう続けるか」の具体的な設計は、診療システムのなかにほとんど組み込まれていないのが現状です。
印刷したパンフレットを渡しても、続けられる人は多くありません。リハビリ通院も、保険診療の制約から、せいぜい週に 1〜2 回。残りの時間をどう過ごすかは、患者さん自身の手に残されています。
慢性的な運動器の痛みは、診察した「瞬間」ではなく、診察と診察のあいだの毎日の過ごし方で結果が決まると考えます。そこに、まだ整備されていない場所がある。これを何とかしたいというのが、いまの自分の気持ちです。
次は、その「痛み」そのものの仕組みについて、一度きちんと書いておきたいと思います。


病院経営の現場でも、15分の外来診察の枠内で提供できる医療の限界と、保険診療の制約によるリハビリ通院の頻度の少なさは常に直面する課題です。どれほど診察室で的確な処方や指導を行っても、患者さんが痛みと過ごす残りの23時間45分の管理を本人任せにしてしまう現状は、医療の質やアウトカムの観点からも大きなボトルネックと言えます。印刷したパンフレットを渡すだけにとどまらない、診察室の外の時間をシームレスに支える仕組みの実装こそが、次世代の医療経営や地域包括ケアにおける真の価値創出に繋がると痛感します。